今回は「ボールヒットの本当の感覚を体験する壁すり抜け素振り」というお話をさせていただきます。
本当のボールヒットの感覚って、一般ゴルファーにおけるスイングの感じとはとんでもなく異なるものです。
まさに自らはクラブを振りにいかないからです。一体、どういうことか?
◆ドリル「壁すり抜け素振り」
そこで、その本当のボールヒットの瞬間の感覚を簡単に体験できるドリル「壁すり抜け素振り」をお伝えしておきます。
できそうな場所を見つけてやってみましょう。
クラブが当たっても問題ないネットなどを探したら、やり方は次のようになります。
(1)真っ直ぐに立ってトップの形をつくる
(2) 腕を伸ばしてグリップエンドがネットなどに触るぐらいの距離に立つ
(3)クラブを水平振りで目一杯振るがネットにヘッドを当てないようにする
ネットなどの前にそれに触るぐらいの距離に立ってみるとわかりますが、ここで振ったら絶対にネットなどにヘッドが当たるから振ることなどできないと感じるものです。
しかし、ここでしっかり振ってみましょう。
まず最初は、ゆっくり振ってみて大体の感じをつかんでから、だんだん強く振ると良いです。
最初はヘッドがネットなどにヒットすると思いますが、腕で振りにいかないでリリースされることをガッチリ抑え込みます。
そうすると、案外当たらないで目一杯振ることができます。
そして、そのときの感覚がゴルフの通常のショットでの本当のスイングの感覚となります。
まさに、絶対に自分からは振りにいかないで、自然なしなり戻りに任せることが最高のスイングとなります。
ネットなどがなかなか見つからなくても、イメージでネットなどがあると思ってやってみても感じはつかめます。
私のコーチングでお客様にやっていただくと、え、スイングってこんな感じだったんですかと皆様驚かれます。
ネットがない場合は、壁などでゆっくりやってその感じだけですが体験していただいています。
また、野球でも同じ素振りをやっていたとのお客様も、ゴルフでも同じたったんですねとのことで、野球での経験をゴルフに直結させるヒントになったらしいです。
◆ゴルフのスイングへつなげる
ということで、真っ直ぐに立って上半身の自分から出そうとする力で振らない感じをつかめたなら、実際のゴルフのスイングにそのイメージをつなげたいものです。
そのための一番簡単で、誰でもひとりで練習していて確認できる方法があります。
それは、サンド・ウェッジで15yキャリーさせる練習(SW15yC)で、フィニッシュを確認して修正する練習です。
両足の母指球の少し後ろの間隔であるスタンスの幅を、腰の幅程度の30cmぐらいにセットして、そのスタンスの幅の中で脚を使い切ります。
15y程度のキャリーでの腰から首の付け根である体幹の回転速度では、上半身はしなったまましなり戻りません。
そのため、フィニッシュして上半身がしなった形を維持できているかどうかを確認するだけで、上半身の自ら出そうとする力でスイングしたかどうかをチェックできます。
壁すり抜け素振りとSW15yCを織り交ぜながら練習することで、ボールヒットの本当の感覚が体験だけではなく身についてきて、ドライバーショットまで劇的に変貌します。
◆なぜSW15yCではしなり戻らないのか
なぜSW15yCではしなり戻らないのでしょうか。
ヒトの筋肉には長さに反応するセンサーがあり、筋肉が伸ばされるとそのセンサーが反応します。
そして、伸ばされたという信号は脊髄に到達して、脊髄からは伸ばされた筋肉を縮める信号が発信されます。
この信号のやり取りのことを「伸張反射」といいます。
筋肉が伸ばされる速さが速いほど「伸張反射」も大きな信号になり、対応する筋肉をより強く収縮させようとします。
この動きは、大脳が関係していないので力を出している感じがしません。
そして、神経の伝達速度を見ると、ざっとした分類になりますが大脳からの運動神経伝達速度 15〜40m/sに対して、伸張反射伝達速度 70〜120m/sとなっています。
これは伸ばされている筋肉が「伸張反射」で収縮しようとする場合は、自ら縮めようとするよりも2倍以上ぐらい高速に伝わることを示しています。
まさに軽く振ったのに飛んだと言う、誰でも一度や二度は経験のある何とも気持ち良いショットのときが「伸張反射」に誘発された「伸張性収縮」動作です。
「伸張性収縮」とは、筋肉が伸ばされながら縮もうとすることです。
「伸張性収縮」に対して、筋肉を短くしながら縮もうとする筋肉の使い方は「短縮性収縮」と言います。
まさに、自ら物を動かそうとかクラブを振り回そうとするときの筋肉の使い方が「短縮性収縮」です。
そして、「伸張性収縮」では「短縮性収縮」に比べて2倍以上の力が出せて、しかも運動が高速になるほどその差は顕著になります。
◆SW15yCでチェックすること
ところが、SW15yC程度の体幹のターンの速さでは、上半身のしなりの中心となる肩甲骨周りなどの筋肉が伸ばされる速度はそれほど速くありません。
そのため、「伸張反射」はほとんど発生しません。
そして、上半身で自ら力を出そうとするのではなく、クラブが置いていかれない程度の受ける力だけで耐えるようにしてみましょう。
そうすればSW15yCでダウンスイングからボールヒットに向かう脚の動きでヘッドが置いていかれて、しならされた上半身のしなりは残ったままフィニッシュに向かいます。
30yキャリー以上ぐらいになってくると、「伸張反射」が大きく発生してきて勝手にしなり戻ります。
SW15yCでフィニッシュでおへそが打ち出し方向を向くまでしっかりフルターンして、上半身のしなりが残っていることを確認すれば良いです。
上半身のしなりの形とは、セットアップに対してヘッドが置いていかれて、右手の平が打ち出し方向に対して45度程度左を向いて右肘は曲げさせられている形です。
◆ボールヒットに向かう両脚の動き
ここで、ボールヒットに向かう両脚の動きを確認しておきます。
ボールヒットに向かって上半身には下半身の動きで、しなりとしてのエネルギーをじっくりと溜めます。
そして、ボールヒット直前で腰から首の付け根である体幹を鋭く左ターンさせることで、左肩甲骨は一気にしなりを多くします。
そうすると、そこに「伸張反射」が発生して、「伸張性収縮」状態でそれまでのしなりのエネルギーを一気に解放します。
この体幹の左ターンの誘発の原動力は、左脚の縦蹴りです。
そして、太ももの骨である大腿骨は骨盤に下から真っ直ぐに付いているわけではなく、Lの字になって横から付いています。
そのため、腿を内側へ締める動きを行わないと脚は外に倒れてしまい、股関節を伸ばす動きを行うお尻の大きな筋肉である大殿筋を上手く使えません。
両腿を締めることを強く意識すれば、両脚は強烈に地面を踏んでくれます。
そのため、ボールヒットで脚をしっかり使えるためには、ボールヒットに向かって左脚を伸ばしながら両腿をキュッと引き締めるイメージの動きをしっかり意識します。
そして、腕とクラブが左に振られると、下半身はその反作用として右にターンさせられる力を受けます。
そのときに右ターンさせられる力を右脚でしっかり受け止めるほど、クラブは鋭く振られてボールが飛びます。
そのときに内転筋が締められていることで、右脚が縦に力を発揮して上半身の反作用をガッチリ受け止めることができます。
右脚はそれまでは自ら力を出そうとするのではなく、この腕とクラブの反作用をしっかり受け止めることに全力を使うことでボールを遠くまで飛ばせます。
内転筋を締める動きは「短縮性収縮」で行うしかないので、腿の内側をキュッと締めることはかなり意識的に自ら力を出して行う必要があります。
◆壁すり抜け素振りでのコツ
ところで、壁すり抜け素振りでホールヒットでの本当の感覚を体験できるためのコツがあります。
それは、ネットなどに向かう直前で左脚で地面を蹴るときに、上半身全体を力で固めることです。
クラブを脚で目一杯振ると、ネットなどに当たる直前の脚の動きでの体幹の加速で上半身の特に左肩甲骨周りには「伸張反射」が発生してクラブをリリースさせます。
そこで、上半身全体をネットに当たる直前だけ固めようとすることで、ネットの直前での体幹の鋭い回転の加速でも上半身がしなりません。
その結果、「伸張反射」が発生しないでリリースが抑えられます。
普段自ら出そうとする力で振りにいく動作を封印するなら、絶対に自分からは振りにいこうなどとするはずはありません。
そうすれば、本来あるべきボールヒットでの感覚を体験することができます。
